株式会社ギャラリー双鶴 ギャラリー双鶴

2011年8月「記事一覧」

炫火頌板画柵

                                                                                                           

                                                                                                                                                                                                                                 新室の柵.jpg身沁の柵.jpg

 

 

 

 

 

                       

           

新室の柵              身沁の柵

「炫火頌は、ふらふらと天にとびまわているような思い、あたかも天人の羽衣でもつけて、思う存分遊びたわむれている、天上に遊ばせてもらっているという思いで出来ました。」(『板画の道』昭和31年)

 昭和9(1934)年頃から交友のあった文芸評論家保田與重郎(1910~81)の短歌を元にした作品になります。しかしながら、棟方志功がこれを「板画巻物」と呼んでいる仕事(一人の作家の詩・俳句・短歌などを連作板画にする、戦後間もなくからの仕事)の中で、この作品群は特異な位置を占めています。つまり、一時期に制作されたのではなく、昭和23年の2柵を皮切りに断続的に昭和47年頃まで作り続けられているのです。最終的に50柵をめざしたと棟方志功は言っていますが、本当のところ何点制作されたのかは不明です。(現在33柵が確認されています。)長年にわたって作り続けられてきた作品だけに、大きさも不揃いで、画面も縦だったり横だったりと様々ですが保田氏が著書の中で、こう評しています。「一度にまとめて作ったものではない。であるから私の歌にふれた作品は、彼の各時代の手法が現れていて、作品年譜をみるようで、またおもしろい」(『グッドバイ棟方志功』昭和51年)

「炫火」という言葉は作品中の「うつそみは炎となりぬ炫火の炎と燃えて魂氷るなり」からとられており、光り輝くという意味であるとされています。また別説に『万葉集』の中で柿本人麻呂の歌の中にも登場し、大和地方では日の出前の幻想的な自然現象とする説もあります。

 当画廊ではこの作品を販売しております。お気軽にお問い合わせください。


谷崎歌々板画柵

谷崎潤一郎(1886~1965)は昭和31(1956)年「中央公論」の1月号に小説『鍵』の連載を始め、その挿絵を棟方志功が担当していました。ところが、谷崎の事情で2月~4月号を休載することになったため、その間棟方志功は緊張感を保つために同じ谷崎作品で板画を彫り続けることにしました。谷崎の歌集『都忘れの記』を中心に、主として戦後に作った短歌の中から24首を谷崎自身が選び、それを元に作られたのがこの作品です。

こういった「板画巻物」の系譜に属する作品では、棟方志功は戦前からの代赭と群青を主体とした裏彩色の渋い色合いに、少しずつ明るく色数も色の濃さも増していく傾向にありましたが、この「谷崎歌々板画柵」ではいっきに色数も色の濃さも増していきました。

また、棟方志功自身も、この時期に多かった丸刀のみでの制作ではなく、三角刀や小刀など、様々な彫刻刀を駆使して自由に作るなど制作の幅が広がったことを述べていました。

「この作品で、わたくしの板画への思いがほぐれて、これからの年々歳々を、板画の大きなしろしめしが、もっと大きく開かれて、巾く広く、所謂大きい板画の執念が、さらに美の世界へ世界へとのびてゆく道が拓かれてゆくような思いです。」

「板画の道」より

夕涼の柵.jpgのサムネール画像のサムネール画像 

 

 

 

 

 

谷崎歌々板画柵 

棟方志功 「夕涼の柵」

 

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ハドソン河自板像

MN0097はどそん自板像の柵.jpg棟方志功作品「はどそん自板像の柵」 1959年

この作品は棟方志功が昭和34年(1959)1月~11月にアメリカ、ヨーロッパを初めて訪れた際に制作されたものです。棟方の自板像(板画による自画像)のなかでも比較的早い時期の制作であり、これ以降、晩年になるほどその数は増していきます。

 この作品と同時期に「紐府客中之作」と書き入れのある『自板像の柵』と『コスモス自板像の柵』も制作していますが、いずれも白と黒の、彩色を用いない手法で表現され、特にこの『ハドゾン河自板像』と『自板像の柵』には板画ではあまり用いない写実的な陰影の表現も見られます。

 この作品の背景に描かれているものは今一つ抽象的になってしまっていて分からないのですが、ハドソン河の水面とその向こうに建物群か船らしきものと、太陽かと思われます。

棟方志功の海外での制作に自板像が多いのは、自分を見つめ直すことにもつながったのではないでしょうか。

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