よくねえ、わたくしが板画という字を使うので、板と版とどう違うのかと聞く人がいるんですよ。まえまえ、わたくしも板画をはじめたころは、版という字をつかっていたんだが、板画の心がわかってからは、やっぱり板画というものは、板の生まれた性質を大事にあつかわなければならない、木の魂というものをじかに生み出さなければダメだとおもいましてね。ほかの人たちの版画とは別な性質から生まれていかなければならない。板の声を聞くというのが、板という字を使うことにしたわけなんです。「巌鷹の柵」 1958年 34.0x25.1
しかし、これはわたくしだけではないんで、江戸の後期ごろの板画家はこの板を使っています。板元などどいうときは、この板だし、わたくしは木版画専門ですから、この板を使ったほうがほんとうだと思って、この板をつかっているんです。
もともといまは普遍的に使われている版は、板を半分にした字なんですね。ですから、半分にするよりも、全部の意味をもたせたほうがいいと、この板の字を使っているんですよ。
棟方志功 「花深処無行跡」より
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